静謐な時間

jiu2007-03-17



今日は1日、小さなアパートの1室の改装案のパースを描いていた。
こんな小さな仕事はめったにない、という小さな仕事なのだが、ここのところ
やっかいでめんどくさい問題ばかりの仕事ばかりなので、ボスが気分転換といって
はりきっていた。ボスがイメージを共有するために、ものすごい数の絵やらオブジェやら
インテリアの写真やら、夜中にネットからダウンロードしたファイルが溜まっていた。


フランス語でBoudoir(ブドゥアール)と呼ばれる装飾でいっぱいの貴婦人の部屋やら
(ちょっとエロちっくな隠し部屋)、ポンパドゥール婦人やら、
カルロ・モリノのインテリアやら、なぜだかラウシェンバーグの絵やら、
ごたまぜのなかにあったこの1枚の絵。


仕事をしながら、ずっとこの絵が気になっていた。
ダビド・ジャック=ルイの「マラーの死」という絵らしい。
私ははっきりいって古典の絵の教養はほぼゼロなので、今の今までダビドといわれても
ナポレオンの戴冠式を描いた人とは知らず。もちろんマラーさんという革命家にも興味がない。


ただ、人の死の瞬間をこんな風にとらえる画家の感性になにかものすごく
惹かれた。この表情。人は生の際にこんな表情をするものか?
新古典主義の時代の絵とは思えないほど現代的で美しいグラフィカルな構成と色。
(この構成はミケランジェロピエタの構図らしいのだけれど、
となるとミケランジェロがすごいのか・・・。)


この絵と、今日できたパースの絵に共通点はひとつもないけれど、
(あ、暗い壁。空間を陰が作っているという所は共通点かもしれない。と、いま理解した。)
ヨーロッパ人が空間を考えているときには、こんなところまで頭のどこかで参照しているのかと
思うと、私がみてきた空間とはとてつもなく遠い世界なのかもしれない。