静から動の季節へ
1年の半分は自転車で、残りの半分はトラム(路面電車)とバスで通勤している。頭の中に冬バージョンのネットワークと夏バージョンのネットワークがある。冬はどこに何があって、どこにいくにはどのトラムで、どのバスで、どの地下鉄でと都市の地理を交通のネットワークで把握している。夏になるとその公共交通のネットワークと気ままに交差していく道路のネットワークで移動する。どこの道は一通で、どこの道は自転車道がないから、どこの信号は長いから先にわたっておかなくては...という緩い自転車ネットワークの土地勘が少しずつ戻ってくる。頭の回線がぱきぱき切り替わる。
ロンドンのベテランタクシードライバーの脳を調べると、場所を覚える脳の部分が肥大しているのだそうだ。私はしばらく寝かしていたもう片方のネットワークを呼び出すのに少しだけ時間がかかるのだけれど、そのギャップを楽しんでいる。春だ。半年ぶりに見る街の風景は少し古くて新しい空間の体験。
日本では季節というのは私を取り巻くもので、勝手に移り変わってくれるのだけれど、ここでは能動的に自分で切り替えて行く。まずは通勤手段をかえる。薄いコートにする。もうすぐ夏時間がくる。そして、時計の針を自分でまわす。当の夏はひっそりと皆がすっかり準備をしてしまってまだ夏になってなかったことを忘れた頃に遅れてやってくる・・・
自転車通勤の季節になるとipodがいい。音楽と風景が重なっていく。
lust:気分。春の気分。Hast du Lust auf...
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